昭和30年代の映画の好況は社会情勢に大きく反映した。特に青少年の非行化の問題は映画にある、と決めつけられ、昭和33年10月、三重県青少年問題協議会は「青少年に好ましくない映画を成人向け指定とし、18歳未満の入場を制限してほしい。看板、ポスター、広告等を自粛してほしい」と各映画館に申し入れがあった。成人向映画というのは「映画倫理規定管理委員会」(昭和25年に発足)という民間の検閲機関によって、審査して決めたものである。三重県では昭和36年4月に「青少年保護条例」を制定してこれを強化、罰則を付し、7月より実施した。ローカル映画館史 久保仁著より
昭和36年当時の成人向き映画 「勝手にしやがれ」(仏)・「からっ風野郎」(大映)・「おそるべき十六才」(新東宝)・「墨東奇譚」(東宝)・「痴人の愛」(大映)
“18歳未満おことわり”、懐かしい言葉です。未満だから18才は観られるのか?とか、どんなシーンがあるのだろう?とか、18才は遥か先なのにおませな話題で楽しんだ小学生時代でした。
そして、待望の18才を迎えて、胸を張って?入館に成功いたしました。大島渚の「日本春歌考」やミケランジェロ・アントニオーニ監督の「欲望」など鑑賞しました。映画「欲望」(1967年)は、多少の裸はある物の「なんでこれが成人向き?」と思える作品でした。今と時代が違うのですねぇ。
若いファッションカメラマンが公園に出かけます。人気のない緑深い景色を撮っていると、遠くにアベックが望めます。木の陰に隠れて撮影を続けていると、女性が近づいてきてフィルムを返せと迫ります。何とかごまかして帰らせ、スタジオで現像に入ります。ネガから投影して焼き付ける方法でした。どんどん写真を引き伸ばしていくと公園の奥に死体らしきものを発見します。
後年、ブライアン・デ・パルマ監督が、画像を音に変えて探りを入れていく「ミッドナイトクロス」を撮っています。深い緑の公園に出会うと、「欲望」のシーンを思い出します。般若心経の“空”の世界を描いたような不思議な作品でした。