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Channel: 花の四日市スワマエ商店街
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「麦秋」中野翠著“小津ごのみ”より

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 北鎌倉の住宅地の静かでおちついたたたずまいの中で、ゆったりと進行する風格の大きなホームドラマです。“ はにゅうの宿” のオルゴールの音と共に物語が始まります。
 婚期を逸しかけている娘である紀子(原節子)の縁談をめぐって、兄夫婦(笠智衆と三宅邦子)や両親(菅井一郎と東山千栄子)がたへんな心配をするのですが、結局、紀子は嫁ぐことになります。これを機に紀子は秋田へ、両親は祖父(高堂国典)の住む大和へ帰郷することになるのです。
 映画がつくられた昭和26 年の頃には、三世代同居が一般的でしたが、やがてみんなは離ればなれになり核家族が進んでいきます。
 小津監督としては、旧来の大家族主義の崩壊を惜しみ、核家族化を憂うといった気持ちよりも、時の流れの中で変わらないものは何もないという、いわば「 無常」 を描き出したいという気持ちのほうが強かったのではないでしょうか。
 そう考えたほうが紀子と老夫婦の旅立ちが始まり、最後の家族揃って撮る記念写真のシーンも、重みを持って胸に迫ってくるようです。写真は「 時」 というものに対する人間のはかない抵抗のようなものですから。
     
 続いて、中野翠さんは著書「小津ごのみ」でこう記しています。
 人生のさまざまな断面で、ふと「 今が一番いいときかもしれない」 と思う。それは多くの人が経験することだろう。特に劇的というわけでもない、ありふれて、俗で、平凡な言葉だ。「 名セリフ」 的な奇抜さや鮮烈さはない。それをなぜか小津は気に入っていて、映画の中で繰り返し使っているのだ。「欲を言えばキリがないが、私たちはいいほう」 というセリフも「 麦秋」 と「 東京物語」で使われている。両方とも先輩の夫婦の会話の中に折り込められている。これも世間でよく聞かれそうな言葉だ。さまざまな不満や屈託を抱えながらも、多くの人はいささかの心理的努力をして、こういう言葉を呟き、自分の人生を肯定しようとする。
     
 現在という時代を過ぎ行く時として深い愛借の情をもって眺めるというし点(視点)がこの作品をユニークなものにしているのが分かります。北鎌倉・鎌倉の大仏・ニコライ堂の見える神田駿河台・銀座のオフィス街・上野公園などしみじみとした風景が描き出されているのもみどころです。
 2月24日(金)午後6時30分 スワセントラルパーキング2階で上映 入場無料です
お車でお出かけの方は 駐車場2階より直接会場に入れます

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