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丹下左膳余話 百万両の壷2

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林 不亡原作の「丹下左膳」は、伊藤大輔、マキノ雅弘などの名監督により過去にも何度も映画化されているが、同じ大河内傅次郎が主演している丹下左膳シリーズの中で、山中貞雄が監督したこの作品は、それまでのチャンバラ映画から、左膳を中心にした人情喜劇に見事に変貌している。ある小藩に伝わるこけ猿の壺、その壺の中には先祖が隠した百万両のありかが示されていた。その壺を巡って、藩主の弟の道場主や父親を殺された少年、少年を引き取る矢場の女将など様々な人間ドラマが展開する。古道具屋には「河内山宗俊」にも出演している珍優、高勢実乗(みのる)。澤村圀太郎は、伊藤大輔監督のトーキー「丹下左膳」(1933年)でも同じ柳生源三郎を演じている。沢村貞子は妹、加藤大介は弟になる。長門裕之、津川雅彦兄弟は子供役を演じている。笑いとテンポを巧みに取り入れた演出は、この若くして亡くなった監督の天才ぶりを証明している。

 山中貞雄。戦地に倒れ衰弱しながら28歳の若き才能は、無念に震えたことだろう。京都の生まれ。旧制商業学校の時から映画のとりこになり、18歳で京都の撮影所に入る。手がけた作品は多いが、現存するのは「丹下左膳余話 百万両の壺」「河内山宗俊」と「人情紙風船」の3本といわれる。もし彼が戦争から生還していたら。多くのファンや映画人がそれを語り、夢想する。駆け抜けた年月はあまりに短いが、その命は永い。


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