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Channel: 花の四日市スワマエ商店街
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“さいごの色街 飛田”

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“さいごの色町 飛田”井上理津子著 筑摩書房刊
     
週刊文春の本屋さん大賞でノンフィクションエッセイの3位に挙げられていた“さいごの色町 飛田”は、大阪西成区に今なお存在する遊郭街を女性ルポライターが12年間にわたって取材を続けたドキュメントです。
遊郭という外部からの取材を拒否する独特な雰囲気のある街に、井上さんが果敢にも乗り込み、聞き取りを続けた記録は大変興味深いものでした。
「大阪の古き良き街を、もっと知りたいんです」
「お宅が飛田のことをどう思ってはるのか分からへんけど、私らはイカンことしてるんやから、書かれては困るんや」
「誰の許可もうて、やっとんじゃ」
「宮城の大学院生やて、研究にとかゆうて勝手に写真撮っとったんや。他人の家の写真を無断で撮って、それで済むと思ったら大間違いや。なぁ、あんたにもわかるやろ」
これは飛田の成り立ちと、売春禁止法が発令された当時の混乱と、莫大なお金が飛び交う繁栄と、衰退期に迫る今日にかかわる、遊郭の経営者、飲食店店主、やくざ、周旋屋、娼妓、呼び込みのおばちゃんなどこの街をめぐる様々な人たちの記録です。
娼妓の人たちは、商品として扱われます。暴力によって高級品らしく仕上げられ、贅沢をさせて借金を作らせ街娼から抜けられないようにします。
客の支払金をごまかす女の子には、殴るけるの制裁を容赦なく加えた。
多くの女の子は「バンス(前借り)持ち」だ。バンスがなくても、飛田の近くのマンションを借りるので、マイナス200万円ほどからスタートさせることが多い。この借金が終わるまでに、宝石、ブランドの服などを買わせ、海外旅行をさせ、「夢と希望」を持たせ、「この店にいるからこそ自分がある」と思うように洗脳していく。借金が減ってくると、ホスト遊びを覚えさせる。それも安いホストクラブではなく、一晩で何十万ものお金を使わせる。
こうして経営者は、商品として拘束していく。
読み進むうち、私は井上さんと飛田の街を取材しているような気持になりました。
最近のインターネットの進歩はすごい。わざわざ出かけなくて飛田の町を見て回ることができます。
     
3年前の飛田 お正月風景 東つきあたりはコンクリートの壁が続く
     
料理店“鯛よし百番”は 大正7年飛田開廓直後に建てられた遊郭がそのまま使われている
最後に井上さんはこう結んでいます。
なお、本書を読んで、飛田に行ってみたいと思う読者がいたとしたら「おやめください」と申し上げたい。客として、お金を落としに行くならいい。そうでなく、物見にならば、行ってほしくない。そこで生きざるを得ない人たちが、ある意味、一生懸命に暮らしている町だから。邪魔をしてはいけない。
四日市にも昭和32年頃までは赤線地帯があった。諏訪公園から西の方角を見渡すと、竜宮城のような建物が建っていたのを、記憶している。
     
辻写真館さんの写真 昭和30年ころの春告園

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