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Channel: 花の四日市スワマエ商店街
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失われた海水浴場⑬蛤のハナシ

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富田驛須賀浦蛤共同販売組合(昭和8年11月15日発行)の広告です(適当に解釈して再記します)富洲原は昭和8年当時まだ三重郡でした。広告印刷は、四日市市沖の島町 中川印刷とあります。

富田の蛤は、比重の軽い朝明の清流で薄められた海水で育成されただけあって、その品質と風味において確かに「天下随一」と誇る逸品であるにもかかわらず、従来は宣伝が足りず、取引方法も悪かった関係でとにかく売値が叩かれて採取者も販売者も、その苦労に報われない状態にあります。この現状打開の為 今回富田駅長の水野氏斡旋のもと『富田驛須賀浦蛤共同販売組合』を立ち上げ販路拡大に乗り出すこととなりました。

本町通りは東富田にありました

蛤は栄養素の最も富んだ食品で、殊にビタミンEを多量に含有し「若返り」に最も効果のあるものですが、お正月の吸い物や、嫁取りの祝い膳の他はあまり日常用いられない地方が多く誠に遺憾です。よって本書を配布することで蛤料理の普及を図らんと存ずる次第です。

東洋町通り商店街

(ここで五代栄養素についての解説)わたしたちが日常とる食品は600種類に及んでいるが、これを化学的成分に分類すると蛋白質、脂肪、含水炭素、無機質、ビタミンの五種類に過ぎず、これらを栄養素と呼んでいる。蛋白質は、体内消費の補充並びに体組織の構成をなし 一部エネルギーの給源となる。脂肪は、消耗脂肪組織の補充及び構成作用を営むものであるが エネルギーの供給が最も主要な任務である。含水炭素(炭水化物)もエネルギーの供給を主作用とするが 残りは脂肪に変化し 又体内含水素炭素成分を補充する。無機質類(ミネラル)は自ら体内無機物質の補充及び生活機能の調整等を掌り、ビタミンは今日の処 生理的機能の調節に欠くことが出来ないと信じられている。然らば、一度味わったら生涯忘れられないあの風味を持つ蛤をこの栄養学上から・・・(ここで蛤の栄養価値が述べられ)

 往年 東海道中の旅人が皆が皆まで この地の名産“焼き蛤”に舌鼓をうって旅をつづけたものであるが 蛤は疲労を回復するにもってこいの食物であることは学術上から見てもまことに述べたるかなと頷かれるのである。

富田浜海水浴場(旅館支那忠付近)

要するに、蛤はそれが有する 云うに云われぬ風味が賞味された我々の食欲を増進せしめる他に 栄養学上からも大に推奨するに足る食品であるのである。

昭和8年11月15日 医学博士 山北又十郎 識


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