第6回 辻さんと巡る昭和30年代の諏訪のまち 戦後、諏訪公園の西に広がっていた赤線地帯。そのあたりを中心に 辻さんと歩いてみましたので、ごらんください。
さても、ひろ助さんに、四日市は内部川の橋の上にて、またまた傘を飛ばしていただきました。
弥次さん北さんの東海道中膝栗毛。お二人は四日市宿にもお泊りいただいております。
三重川の土橋を渡ってゆっくりとした坂を下ると四日市宿である。弥次郎兵衛と北八はここでの一泊を決めていた。
「さあどうぞ。うちへお泊り下さい。おーい。お泊り様がおみえじゃ。」
宿場の両側から宿引きが出て袖を引っ張る。引かれて入った宿がまた貧相なつくりで、おまけに相部屋しか空いてない。弥次さんは「かまわねぇ」とあきらめ顔だ。宿の奥まった部屋に居た相客は田舎者の二人連れ。既にくつろいでいて、田舎者のひとりが「お早いお着きでござらっしゃった。」と挨拶をする。さて、女中がお風呂の案内にやってきたので、北八は小声で「今夜はよろしく」とその若い女中に声をかけておいた。懲りないお二人である。
夜も更けて、弥次郎兵衛がふと目を覚ましてあたりを窺うと、行灯はいつしか消えて真っ暗がり。北八を出し抜いてやろうと抜き足差し足で次の間に進出する。かねて聞きおいたとおり、手探りの壁づたい。が、弥次郎があまりに高く手を伸ばしたらしく、吊り棚にこつんと手がつかえる。変な音を響かせたと思ったときは、棚が外れたらしい。
夜這いに忍び込んだ弥次さんは、お女中とコモにくるまれた石の地蔵さんを間違えて大失態!
北八「こいつは大しくじりだ。棚板が外れたらしいぞ。手を離したら棚板が落ちるだろう。どうもガラクタ物がぎょうさん積み上げてある様子だ。こりゃ困ったぁ。」棚から手を放せば大騒ぎになると、襦袢1枚で仁王立ちの弥次さんの処へ、北さんも壁伝いにやってきた。
北八「だれだ、弥次さんか、しかと、弥次さんだな」
弥次「静かに 静かに ここへ来てくれ」
北八「なんだ なんだ どうしたんだ」
弥次「ちょっと これを持ってくれ ここだ ここだ」
北八「どれどれ なにを持つんだ」
北八に棚を持たせたまま弥次郎兵衛は棚を離れてしまった。
「やれやれ なさけない目にあわせる これこれ弥次さん何処へ行く。手がだるいよ どうかしてくだせえ」 つづく
これと全く同じお話が、枝雀の落語「口入屋」にございます。ご紹介は次回へ・・・