第9回 辻俊文さんと巡る 諏訪のまち探訪 でございます
「写真で見る近鉄四日市駅とスワ百貨店開業/四日市を掘り起こし/第9回」 (youtube.com)
さて、1カ月ほど前、ふと手にした本 本所おけら長屋 読み始めるとやめられなくなりました。
万造は、文七を無視して、話を続ける。
「剣術で大切なのは、相手の心や動きを読むことだって。だから刀を構えて向き合った二人は、相手の心の動きを探り合う。構や姿勢から技量を見極め、眼の動きから、それが自信なのか強がりなのかを読み取る。まあ一歩間違えりゃ死ぬことになるんだから、いろんなことを考えるんでしょうけど、しち面倒くせえもんですね。島田の旦那(おけら長屋に住む浪人)にそう言ったら、なんて答えたと思いますか」 文七は何も答えない。
島田鉄斎《だがな、万造さん。一番強い剣客は、相手の心や動きなどは読まない。おのれの心を信じ、正面から正々堂々と打ち込んでくるんだ》
現代に消え去ろうとしている人情噺が、ここでは脈々と生きづいておりやす。たのぴー
「やっぱり、おけら長屋では、そんなことになってんだ。どうしてそんなことに首を突っ込みたがるの。人は人、自分は自分でしょ。おせっかいも度を越えると、ありがた迷惑だわ」
万造はにやりと笑って「お満さんよ、それならどうして八五郎さんのことを伝えに来たんだ。てめえじゃ気付いていないようだから教えてやるがな、あんたもそのお節介に片足突っ込んじまってるんだよ」 お染が小さな声で笑う。
「楽しいよ、お節介って。やくのも、やかれるのも。だってその人が好きってことだろ。嫌いな人にお節介なんてやかないからね。だから、あたしたちには、好きな人がいっぱいいるってことさ」
みんなが優しい顔で、お満を見つめた。
現在では、おせっかい は、むしろ迷惑と考えられがちです。けれど、貧乏人どうしが寄り添って生きる長屋では、思いやり、助け合う心が大切にされました。自分を犠牲にして、なんで人の為に尽くすの?いま、問い直されることばです。