先日、車のラジオで、女優の紺野美沙子さんが新美南吉作品の素晴らしさを挙げていました。2012年12月の安城市視察を思い出します。
でんでんむしの悲しみ 新美南吉
一匹のでんでんむしがありました。
ある日そのでんでんむしは 大変なことに気がつきました。
「ワタシハ イママデ ウツカリシテ ヰタケレド ワタシノ セナカノ カラノ ナカニハ カナシミガ イッパイ ツマツテ ヰルノデハ ナイカ」
この悲しみは どうしたらよいでしょう。
でんでんむしは お友達のでんでんむしのところにやっていきました。
「ワタシハ モウ イキテ ヰラレマセン」
と、そのでんでんむしは お友達に云いました。
「ナンデスカ」
と、お友達のでんでんむしは聞きました。
「ワタシハ ナントイフ フシアハセナ モノデセウ。ワタシノ セナカノ カラノ ナカニハ カナシミガ イツパイ ツマツテ ヰルノデス」
と、初めのでんでんむしが話しました。
すると お友達のでんでんむしは云いました。
「アナタバカリデハ アリマセン。ワタシノ セナカニモ カナシミハ イツパイデス」
そこで、初めのでんでんむしは また別のお友達のところへ行きました。
こうして、お友達を順々に尋ねて行きましたが、どの友達も同じことを云うのでありました。
とうとう、初めのでんでんむしは気がつきました。
「カナシミハ ダレデモ モツテ ヰルノダ。ワタシバカリデハ ナイノダ。ワタシハ ワタシノ カナシミヲ コラヘテ イカナキヤ ナラナイ」
そして、このでんでんむしは もう、嘆くのを止めたのでアリマス。
カナシミ よりも 不幸とした方が いいのでは…と思います。