9月25日の映画鑑賞会は、松山善三監督の“名もなく貧しく美しく”です。この作品は昭和36年1月15日封切りの東宝作品で、ろうあ者同士で結ばれた夫婦が、戦争直後の困難な時代を、お互いが励まし合い助け合って生きていく物語です。
監督と片山秋子役の高峰秀子とは、昭和30年に結婚しています。この作品は、木下惠介のもとで助監督を務めていた松山善三の第1回監督作品にあたり、第12回ブルーリボン賞脚本賞、第16回毎日映画コンクール脚本賞、女優主演賞を受けています。
冒頭、秋子が戦災孤児となった上野アキラを連れて家に帰るのですが、家族は、秋子の留守の間に孤児院へ預けてしまいます。最後に成長したアキラと再会・・というシーンになるのですが、このラストが可愛そうすぎると云った感想が多く、否、これでよかったのだという意見と賛否両論を起こしています。
子役で一郎役の島津雅彦は、小津監督の“お早よう”、“浮草”でもおなじみですが、前作以来2年を経過していて、少し成長した“聞かん坊や”を演じています。
現代ほど身障者に対して配慮がなかった時代、そんな時代に助け合って生きた夫婦。“人は一人では生きられない”ということが身につまされました。
ぜひご覧ください。