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“或る夜の出来事”その2

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フランク・キャプラという名前を忘れてはいけない、と決めたについてはこんな思い出があります。「男はつらいよ夕焼け小焼け」に宇野重吉さんが出演してくださった時、宇野さんが僕にこんな話をしてくれました。

山田洋次“素晴らしき哉フランク・キャプラ”映画の嘘 井上篤夫著 集英社新書より

昭和16年。日米関係が風雲急を告げて、間もなく戦争が始まるのではないかという不安な時代。映画好きだった宇野さんは、死ぬ前に一本映画を見ようと考えました。

そしたら「スミス都へ行く」というアメリカ映画の看板がかかっていた。これを観ようと思ってチケットを買い、ガラガラの客席で見るうちに何だか体の中に活力が湧いて来て、死ぬ気持ちが遠ざかった。もうちょっと生きていこう。死ぬことはないと思うようになり、自殺を止めたそうです。

フランク・キャプラの映画にはよく群衆が出てきます。そこで群衆は人間のあるべき理想に対して、よかった、よかったという思いで皆が拍手喝采する。一瞬でもいい。そんな思いを抱いただけでもこの世は生きる意味があるというようなメッセージです。

松竹の大先輩である小津安二郎とか木下恵介とか吉村公三郎といった人たちは、キャプラを含めたアメリカ映画の偉大な先輩たちの仕事を見て勉強していたのです。小津さんの映画を見ても、喜劇のタッチが大事にされていて、面白い脇役を出して、その脇役で笑わせながらストーリーを運ぶという映画の話術は、主としてキャプラから学んだんじゃないでしょうか。


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