文春ムック スターの肖像” “映画史上最強の作品「七人の侍」はこうして生まれた!”より
平成3年12月号の文芸春秋で、黒澤明、山田洋次、井上ひさしのビッグ鼎談が掲載されていた。“七人の侍”の裏話を語り合ってみえるのだがこれが面白かった。
井上「たとえば勘兵衛(志村喬)というリーダー役がいます。彼は一度は百姓の申し出(野武士から村を守ってほしい)を断るんですが、百姓が寝泊まりしている木賃宿で、人足に「お侍、この抜け殻どもは稗食ってるんだ。自分たちは稗食ってお前さんたちにゃ白い飯食わしてるんだ」といわれて「よしわかった・・・もうわめくな」という。百姓の味方をしてやろうと決意するわけですね。で、僕の一番好きな「このめし、おろそかには食わぬぞ」というところ、あそこはいつ見ても泣くんです。
そして、もうひとつ、井上ひさしさんの言葉から
井上「戦争が終わって、民主主義が入ってきて、日本に憲法ができて突然、世の中は「平和」と民主主義全盛、子供ながらに途方にくれた。そんな時あの水車小屋のお爺さん、儀作さん(高堂國典)といいましたか、あの人こそ日本の国の将来だとはっきりわかったのです。つまりふだんは人の離れた所でコツコツ生きているんですけれど、いざというとき村の人たちに頼りにされている。カネは持たない、力も強くない、でも危機に陥ったときに知恵を出す。世界中がもめて困ったとき、東洋の端っこの日本に立派な憲法というものがあってそれが指針になる。戦後民主主義になった日本の生きるべき道が、、ある意味で水車小屋の儀作という長老に現れている気がしたんですね。