吉田修一著“悪人“が李相日監督(フラガールの監督)により2010年に映画化されています。
原作と比してミスキャストではないか?とか、いろいろ思いながら鑑賞しましたが、感涙の最後を堪能いたしました。チェックしていた佳男の一言。やはり映画でも重要ポイントとなっておりました。
娘を殺された佳男(柄本明)。佳男は、娘を車から蹴落とした増尾の友人鶴田を横にこう話しかける。
「あんた、大切な人はおるね?」
佳男の質問に、ふと鶴田が足を止めて首を傾げる。
「その人の幸せな様子を思うだけで、自分までうれしくなってくるような人たい。おらん人間が多すぎるよ」
ふとそんな言葉がこぼれた。
「今の世の中、大切な人もおらん人間が多すぎっとたい。大切な人がおらん人間は、なんでん出来ると思い込む。自分には失うもんがなかっち、それで自分が強ようなった気になっとる。失うものがなければ、欲しいものもない。だけんやろ、自分を余裕のある人間って思いこんで、失ったり、欲しがったり一喜一憂する人間を、馬鹿にした眼で眺めとる。そうじゃなかとよ。本当はそれじゃ駄目とよ」
犯罪者を、とかく世間の人は先入観で判断しがちです。しかし、人は人とのしがらみの中で生きている。愛する人を思う気持ち。肉親を思う気持ち。時にこれらは重圧になるけれど、持ちこたえて生きることが人の道だと思います。
妻夫木聡、深津絵里のほか、いい脇役が揃っています。
余貴美子
樹木希林
九月には、同じ吉田修一と李相日監督のコラボで“怒り”が上映されます。