「男はつらいよ」を見ていて、いつも出てくる役者さんを見つけるとうれしい気分になります。旅先で寅さんが泊まる宿の仲居さんを演じている女優が気になったら、相当のファンです。十中八九演じているのは谷よしのさん。松竹の大部屋俳優さんです。第十七作「寅次郎夕焼け小焼け」では、とらやの客で「お団子いくら?」と聞くと、寅さんに「二百万円」と言われてびっくり。
谷よしのさんは、小津安二郎監督や木下恵介監督の作品にも出演しているベテラン。「男はつらいよ」には三十六作品も出演されています。
谷よしのさんと並んで印象深いのが、大杉侃二郎(かんじろう)さんです。「寅次郎恋歌」では、酔った寅さんがとらやに連れてきた昔の仲間を演じている方です。数ある大杉さんの出演場面で、僕の印象に残っているのが「相合い傘」です。函館港のラーメン屋台で、寅さんとリリーが二年ぶりに再会します。あれからいろいろあったリリーは寅さんのことが懐かしくてたまりません。「あんた、あれから何してたのよ」と問われた寅さんは「え、俺か?恋をしていたのよ」寅さんとリリーの楽しい日々がここから再開します。
そのラーメン屋台の親父さんを演じているのが大杉侃二郎さんなのです。
「寅さんのことば」佐藤利明著 東京新聞刊