四日市商工会議所様発行“商工春秋12月号”より。“清書七伊路盤(いろは)ひざくりげ弥次郎兵衛 喜多八” 歌川豊国(三代)筆 安政三年(1856)年版
今回は、四日市の風景でなく、四日市を舞台としたものを紹介する。
清書七伊路盤は、いろは47文字に題名の頭文字を合わせたシリーズ。
上部の屏風は、行書体の漢文に見えるが、実は該当するいろはのおなじ音をならべたもの。本品に描かれた文字も全て「ひ」と読む。
描かれているのは、弥次さん喜多さんでお馴染みの「東海道中膝栗毛」において、四日市に泊まった際、夜這いに出ようとする弥次郎兵衛が、暗闇の中で外れてしまった棚を喜多八に支えてもらっている場面である。
当時の歌舞伎役者の中山市蔵を弥次郎兵衛に、中村鶴蔵を喜多八に見立てている。二人の顔と仕草、特に弥次郎兵衛の間の悪い表情がユニークである。
(市立博物館学芸員・田中伸一氏)