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戦後世相史と『甲賀忍法帖』

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中日新聞の夕刊に連載されている「ベストセラーで読む 戦後世相史」末國喜己著。

6回目になる。終戦という時代背景でベストセラーになった作品を紹介している。第6回は 山田風太郎著『甲賀忍法帖』

徳川二代将軍の秀忠は、次の世継ぎを決めるため、長男 竹千代側から伊賀忍者を、そして次男である国千代側から甲賀忍者の各十人を選出してたたかわせることになる。この忍者たちは、権力者の後継者を決めるという自分たちには無関係で、くだらない目的のために戦い、嬉々として死んでいく。彼らは、太平洋戦争で、大東亜共栄圏という砂上の楼閣のために戦場へ向かった兵士たちの戯画であり、積極的に戦時体制に協力していった事実を思い出させる役割も担っていた。戦後は忠義を誓う相手を会社に変えて経済戦争を始めた、懲りない日本人を皮肉ったといえる。

各選出の忍者が面白い。手足の先に吸盤があり粘性の痰を吐く者、四肢はないが鱗と肋骨を使って高速移動するもの、肉体の損傷を即座に回復させるもの、髪の毛を自在に動かし針状にして攻撃する者等奇想天外である。思うに原作は、後にヒットしたテレビ番組『隠密剣士』に影響している。

ベストセラーで読む戦後世相史、第1回は「肉体の門」、第2回「犬神家の一族」、第3回「栄花物語」、第4回「点と線」、第5回「梟の城」と連載されている。つづく


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