平和の女神像の東に産業ホールが見える
正面入り口を入って左側にある大きな建物が“産業ホール”である。ここは近代日本の産業、鉄・石炭・電力の三大基幹産業の製品が陳列されていた。金属工業の刺激となるスマートな自転車、電気洗濯機、電気冷蔵庫、扇風機、ミシン、ラジオ、アイロン等が並び、一般化されんとしつつある蛍光燈は各所に藍色の柔らかい光を放ち、家庭婦人の注目の的となっていた。
繊維工業は、綿糸の域をはるかに超えたビニール・ビニロン・ナイロン等の化学繊維が、誠に清らかで美しい色彩を織り出し近代女性の服飾の上に大きな役割を演じている。化学工業の発達は繊維ばかりでなく、合成樹脂製品が日用品に多く使われていた。
農業生産の陳列では、化学肥料の性能が図表で示されていて、将来の合理的方向を示していた。従来の日本人の食生活には幾多の改善の余地がある。食生活の上で栄養的必需品たる砂糖・醤油・味の素・ソース、その他罐詰等を陳列して観客の食欲をそそるに充分であった。また、お茶(玉露や紅茶)や清酒、ウイスキーの展示もあった。
物がなかった時代、見るものすべてが新鮮で購買意欲を掻き立てられた。