明治11年、イザベラ・バードは、横浜から新橋まで列車に乗っている。
東京と横浜の間は、汽車で1時間の旅行である。素晴らしい鉄道で、砂利をよく敷き詰めた複線となっている。鉄橋あり、こぎれいな停車場があり、終着駅はしっかりと出来ており、広々としている。この鉄道は、英国人技師たちの建設になるもので、明治5年の開通式には、ミカドが臨幸された。
横浜駅は、りっぱで格好の石造建築である。玄関は広々としており、切符売り場は英国式である。等級別の広い待合室があるが、日本人が下駄をはくことを考慮して、毛氈を敷いていない。そこには日刊新聞が備えてある。広くて天井がつき石を敷き詰めたプラットホームへは、周り木戸を付けた関所が設けてある。切符切り《これは中国人》、車掌と機関手《これは英国人》そのほかの駅員は洋服を着た日本人である。停車場の外には、辻馬車ではなくて人力車が待っている。
英国製の車両は、英国にあるものと違っていて、左右の両側に沿って座席があり、両端にドアがある。一等車は、深々としたクッション付きの赤いモロッコ皮の座席を備えたぜいたくなものだが、ほとんど乗客はいない。二等車の居心地の良い座席も、立派なマットが敷いてあるが、腰を下ろしているのは実にまばらである。しかし、三等車は日本人で混雑している。
コミック化もされている