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Channel: 花の四日市スワマエ商店街
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花の東海道 番外 半次捕物控 その一

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絶え間なく降りそそぐ秋の長雨が続いていて、時折突風が手にしている傘(からかさ)を吹き飛ばそうとする。佐藤雅美著“半次捕物控 影帳”より 冒頭部分

この前はひどい暴風で柿板(こけらいた)が何枚か吹き飛び、とりあえずのところごまかしたばかりだというのにまた雨漏りに悩まされそうだと、つまらぬ心配をしながら半次はいつものように道をまっすぐいこうとしたのを思いなおして右におれた。

半次はなぜ“思案橋”を渡らなかったのでしょうか?

道なりにまっすぐいき、小網二丁目から鎧の渡しを利用すると、向かい側の丹後田辺牧野家の上屋敷(尾張屋江戸切絵図では松平和泉守邸)の東北端にたどり着く。目指す場所はそこから目と鼻の先にあるが、日本橋川はひどく増水している。転覆の虞(おそれ)があるからと渡はお止めになっているはず。半次は思いなおして道を右に折れた。親父橋、荒布(あらめ)橋、江戸橋、海賊橋と大まわりして、牧野家と坂元町一丁目の通称海賊橋通りのぬかるんだ道をはねるように歩いて、坂元町一丁目の切れる角を右にまがった。

まがった左手には山王(さんのう)の御旅所である。隔年六月十五日の御祭礼、山王祭の日には永田町にある山王権現の本社より神輿三基がきて一休みする処から山王の御旅所といわれている。境内には山王権現の他薬師堂が建てられていて参詣客を見込んだ水茶屋ももうけられている。

麹町1丁目山王祭練り込み・広重 江戸百より

半次は御旅所門前の、ぬかるんだ道のやはり水たまりを避けながら歩いて行って、右手坂本二丁目の、通りに面して建てられている二階家の前で足を止め、笠を逆さに持ちなおして雨のしずくを振り落とした。二階家は高麗屋源蔵の引合茶屋である。  つづく


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