昭和42年になると、貸本出版社が多く倒産したとあります。マンガの歴史は、我々団塊の世代の歴史と重なります。戦後の貧しい時代、私たちは貸本マンガ店に足しげく通いました。「マンガは子供たちに悪い影響を与える」といわれつつ・・・。やがて、ヒーローの時代となり、付録でパンパンの「少年」や「冒険王」などの月刊誌が発売される月初め(月末?)になると、待ちきれない思いで本屋に詰めかけました。やがて「週刊少年サンデー」や「週刊少年マガジン」が発売されます。こうして、社会への浸透が進み、漫画が認められる時代になってくると、“良いマンガ”について考えられるようになりました。そうした中でも、少女マンガの善戦が目立ちます。底堅いファンがいたからでしょうか?さて、団塊の世代に合わせるかのように、マンガも少年から青年に、大人にも楽しめるようになりました。十年余の間に、出版業界は怒涛の変化に晒されてきたのです。
「月間漫画ガロ」に連載の白土三平『カムイ伝』が、小学館から単行本(1巻~9巻)として発売されました。江戸期、不合理な身分制度の下でもがき苦しむ登場人物たちの壮大な悲劇ドラマは、当時、マルクス主義に染まっていた学生や知識人の支持を得て、作者の意図を離れ高度なマンガ批評を生むに至りました。
雑誌「美しい十代」などの連載された みつはしちかこ の『小さな恋の物語』が、学習研究社から発売されました。小柄なことを気にする女子高生チッチが、長身でイケメンのサリーに心を寄せるラブストーリーで、ノスタルジックに昔を思い出す女性や中年男性に支持されました。
マンガ家志望の若者の青春期の苦悩を、シリアスかつロマンティックに描いた永島慎二の『漫画家残酷物語』は、「青春劇画」と称され、都会的でお洒落な画風によって若者を惹きつけ、当時の大学生に大きな影響を与えました。(わたくしもせっせと読みふけったものでした)
東海林さだおの『新漫画文学全集』は、それまでの子供マンガの世界に対して「子供」のようなせこくて不真面目な主人公を登場させ「大人漫画」を確立しました。
虫プロから「まんがエリートのためのまんが専門誌」として『COM』が発売され「ガロ」と並んで人気を得ました。執筆は、岡田史子、竹宮恵子、日野日出志、諸星大二郎、あだち充、西岸良平らがいます。