シリーズ17作目の“男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け”では、日本画壇の第一人者に扮する宇野重吉がとてもいい味を出しています。
この作品で志乃扮する岡田嘉子は、大正から昭和にかけてのトップ女優。奔放な恋愛遍歴をたどった彼女は、ソビエトへの亡命など、波乱の生涯を送りました。山田監督のエールで、30年ぶりの映画出演でした。
池ノ内静観は、久しぶりに龍野市に住む昔の彼女“お志乃さん”の処を訪ねます。
「お志乃さん 申し訳ない 」
「どないして」
「僕は あなたの人生に責任がある」
「和夫さん 昔とちっとも変わらしまへんな その言い方」
「いや・・・しかし 僕は後悔してるんだ」
「じゃぁ 仮にですよ あなたがもう一つの生き方をされとったら ちっとも後悔しないですんだと 言い切れますか」
「・・・」
「あたし このごろよく思うの 人生に後悔はつきものじゃないかしらって
ああすりゃよかったって後悔と
もう一つは どうしてあんなことしたんだろうっていう後悔・・・」
昔の ソビエト連邦への逃避行を 彷彿とさせるシーンです