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“小早川家の秋”感想

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8月21日、小津安二郎監督“小早川家の秋”を鑑賞いたしました。

Tさんの感想です。

今回の「小早川家の秋」は前回の「浮草」同様、関西歌舞伎の大御所 中村雁次郎を主役に迎えた作品で、ヤンチャ親父振りが存分に発揮されていましたね。共演の原節子はこの時すでに41歳。地味な和服(縞や格子柄の紬など)姿で通し、控えめの演技ですっかり後ろに引いています。

それと入れ替わるように司葉子や新珠三千代が生き生きと演じていました。新珠美千代は少し影のある芯の強い女性を演じては定評のあった女優で、TVに進出した「細腕繁盛記」では大ブレークしましたね。コメディアン東京ぼん太(唐草模様のスーツ)は彼女の熱烈なファンでした。原節子と司葉子は小津作品での共演が多く(姉妹、母娘)私生活でもずーっと交流があり、司は原の入院先に訪問を許されているそうです。

作品中印象深かった場面は

① 京の町家の夏の設え・・・扇風機もクーラーも無い部屋でいかに涼しく過ごすかの工夫の数々

② 奈良 西大寺近くにあった競輪場・・かつては多くの集客があったとか

③ 100円硬貨・・・司が原に1個つまんで渡す場面がありましたが、昭和35・36年にはすでに使用されていたんでしたか?余談ですが、私が昭和45年秋鹿児島に旅行した折タクシー運転手は100円札でおつりを出しました。

④ 大番頭(山茶花究)が事務員2人にソロバンを入れさせて・・・答え合わせで「同じです」と返事した女事務員にキチンと数字で言わせていたところで、この大番頭の真面目で忠義な人となりが表現されていました。

⑤ 火葬場の赤いレンガ造りの煙突から立ち上る白い煙・・・魂が煙に乗って昇っていくであろうと皆が思いを馳せる。さて、ストーリーテラーとして起用されていた笠智衆と望月優子の夫婦に「人は死んで また生まれる」と語らせ、苔むした墓石のあちこちで憩うカラスの姿のアップで終わらせた小津監督のメッセージとは・・・一生独身で通し昭和37年に最愛の母親を看取りその1年後、後を追うように亡くなった日、小津氏は満60歳の誕生日を迎えたのでしたね。

 ※100円硬貨の銀貨 鳳凰柄は昭和32年、銀貨 稲穂と分銅柄は昭和34年、そして現在使われている白銅貨 桜柄は昭和42年に発行されています。地方へ行き渡るのには時間がかかったのでしょうか。


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