四日市商工会議所様発行の機関紙“商工春秋2月号 東海道五十三駅四十四 四日市”より。
四日市を描いた浮世絵の多くは、蜃気楼や追分の鳥居そして橋を描いたものに偏り、宿場の賑わいを描いたものは本作品のほかに見つかっていない。
二階建ての旅館が立ち並ぶ前を馬に乗った旅人や天狗面を背負い白装束に身を包んだ金毘羅詣での道者が通る。旅人を招きよせる二人の客引きに見入ると、彼女たちの元気な声が聞こえてきそうである。
本作品は、同じシリーズの他の宿と赤色の調子が異なることに加え、署名が立でなく後に名乗った広重とあることから明治に入ってからの後摺りと考えられる。
(市立博物館学芸員・田中伸一)