遅くなりましたが、山田洋次監督の“家族はつらいよ”を観てまいりました。観客は二人。大きな声で笑うこともできず・・・ま、遇い方が 男でよかった デス。
これで小津監督の“東京物語”と、山田監督の“東京家族”そして“家族はつらいよ”の三部作?を観ました。この三作の共通した見せ場である、息子の嫁と父親が語り合う最後のシーン。これらの共通点と違いを再現したいと存じます。
まず小津安二郎監督の“東京物語”
母親が亡くなり、息子たちはせわしげに帰ってしまう。一人残って義父(笠智衆)の世話をしていた紀子(原節子)がいよいよ東京へ帰る日を迎える。
「お父様、今日、わたくし、お昼からの汽車で・・・」
「そう、帰るか」
「はあ」
「お母さんも心配しとったけど あんたの これからのこと なんじゃがなぁ やっぱり このままじゃ いけんよ 何にも気兼ねはないけぇ ええとこがあったら いつでもお嫁に行っておくれ もう昌二のこたぁ わすれてもろうて ええんじゃ いつまでもあんたに そのままでいられると かえってこちらが心苦しゅうなる 困るんじゃ」
「いいえ そんなこと ありません」
「いやぁ そうじゃよ あんなみたいな ええ人は ないいうて お母さんも誉めとったよ」
「お母様 わたくしを 買いかぶっていらしたんだわ」
「買かぶっとりゃせんよ」
「いいえ 私 そんな いい人間じゃありません お父様にまで そんな風に思って頂いていたら 私のほうこそ かえって 心苦しくって」
「いやあ そんなことぁない」
「いいえ わたくし ずるいんです お父様や お母様が 思ってらっしゃるほど そういつもいつも 昌二さんのこと 考えているわけじゃありません」
「ええんじゃよ 忘れてくれて」
「でもこの頃 思い出さない日さえ あるんです 忘れてる日が 多いんです わたくし いつまでも このままじゃ いられなくなるような気がするんです このままこうして 一人で居たら 一体どうなるんだろうなんて 夜中にふと考えたりすることがあるんです 一日一日が 何事もなく過ぎてゆくことが とっても 寂しいんです どこか 心の中で 何かを待ってるんです 狡いんです」
「ええんじゃよ それで やっぱり あんたは ええ人じゃよ 正直で」