“おかしな男 渥美清”小林信彦著 新潮文庫より
昭和42年の渥美 清の主な仕事は、東映の<列車>シリーズで、翌年にかけて「喜劇・急行列車」「喜劇・団体列車」「喜劇・初詣列車」と三本作られている。のし上がってきたころの意気軒昂たる彼だったら、絶対に出演しなかったものだと思った。<渥美清の映画は当たらない>という評判に対して、彼の表現を用いれば、<自分を忘れられないようにしておく>映画だったのだろう。とあった。やはりヒットしなかったのだ。
前回、山田洋次監督は<列車>シリーズをヒントに“男はつらいよ”をつくったと書いたが、原型は、山田監督の昭和39年作品、ハナ肇の“馬鹿まるだし”にすでにあった。
この終わり方(失恋して、立ち去る)は、山田洋次の名前をはじめて一部の人に知らしめた「馬鹿まるだし」のラストと非常によく似ている。惨めな死に方をしたハナ肇の幻が未亡人(桑野みゆき)に挨拶に来るシーンが「馬鹿まるだし」にあり、そのセンチメンタリズムが快いのだが、テレビ版「男はつらいよ」もほぼ似た終わり方をする。
フジテレビ“男はつらいよ”
昭和43年10月から翌年3月まで放送
奄美大島で、寅はハブに噛まれて死ぬ。
ヒントにしたのは<列車>シリーズの方でした・・・か???