前回、届いたTさんの感想に、火鉢の絵がお父さんの手によるものではないかとありました。冒頭の夢から覚めるシーンは、伊賀上野の柘植で撮られたものです。四日市とは近い距離ですので可能性は充分あります。万古焼の白い火鉢に青い松の柄は、大正焼といい、画工水谷氏によって数多く作られたそうです。この火鉢がお父さんの手によるものかどうか分かりませんが、水谷氏の元でこの模様を描いてみえたという事でした。
Kさんからも感想をいただきました。ありがとうございました。
シリーズを通して、テーマとしてあるのかもしれませんが、この作品が一番親子の情愛というものがあふれていると思います。(一人前でない自分が偉そうに言っておりますが・・・)
散歩先生(東野英次郎)と娘(佐藤オリエ)、母(ミヤコ蝶々)と寅さん。やむにやまれぬ事情で寅を捨てねばならなくなった母(映画の中で種明かしをしてほしいです。38年前と言ってますが、終戦後のドサクサではないと思いますが・・・)。
対面した時に。蝶々さんの抑えた演技。その後のセリフ「親の都合もわからんと・・・」に繋がる感じがすごくよかったです。
そのあと、最後のオチ的なシーンでは、自分の母を“人でなし”のように言っておきながら母に甘えた感じで歩いていく寅。シリーズではあまり見かけない様なラストシーン。二作目とあってこの終わり方でよかったのですね!シリーズが続くにつれて、いろいろな終わり方に変わっていきますが。
※ 劇中親子と分かったシーン
夏子「このひと寅次郎さんなのよ」
菊「えっ!おまえ!・・・ふーん、そう。今ごろ何の用事やねん。あっ銭か?銭はあかんで、もう親子でも銭は関係あらへんで」
夏子「おばさん、何てこと言うの。寅ちゃんはね、産みの親に会いたくて、それだけでここまで来たのよ」
寅「お嬢さん、帰りましょう。おれは何もこんな淫売上がりの女見るために、のこのこやって来たんじゃんじゃねえんだよ。ひりっぱなしにしやがって。人のことほったらかして雲隠れしやがって」
菊「ひりっぱなし?なに云うてケツかんのじゃ、アホ!どこぞの世界に自分の子どもを喜んでほうる親があるんじゃ!」
菊の今まで歩んできた苦労人生が垣間見えるようです
そして、最後のシーン。新婚旅行で京都に来た夏子は、三条大橋で寅と菊が歩いていくところに出会います。夏子の眼差しが良いですね。
夏子「お父さん(注・父の坪内散歩は、すでに亡くなっている)寅ちゃんはお母さんに会っていたのよ。そうなのよ、やっぱり。そうだったのよ、お父さん。お父さんがどんな顔するか見てみたいわ」
藤村「おい、声をかけなくていいのか・」
夏子「いいのよ・・・いいの・・・
でも、もう、そのお父さんは、もういないのね」
純情編、夕焼け小焼け、恋歌、浪花の恋、どれも素晴らしいラストです。