蒲郡にある市営竹島水族館へ行ってみた。ここは数年前、水族館を愛してやまない若者たちが、古くて小さな水族館をよみがえらせた。
館内は多くの家族連れで賑わっていた。タッチングプールは大人気だ。見ると随所に手書きのポップが貼ってある。
フラッシュOK、写真を撮って自慢してください等、ユニークで、ユーモアがあって、愛情がこもっている。
従来の水族館は、魚の研究に重点が置かれていた。ではなくて「視点をお客さんに向けよう」。30代の若い館長さんである小林さんは考えた。水槽の裏側に居ないで、前に出てお客さんと対話しよう。要するに対面販売だ。狭い小さなプールのある狭いステージで小林さん自ら“アシカショー”を行う。最後にアシカが高くジャンプする。「うまく着水できないと、前のみんなに水がかかるかもしれないからね」。結局、上手く着水しても水は飛んできた。子供たちは大喜びだ。小林さんは、「小さい水族館でいい」という。
客との距離の近さを売りにするならば、距離が近いことはむしろ利点になる。大きな組織では目の前の客は「自分のお客さん」なのだという意識は薄れがちになってしまう。小さな水族館で飼育員が五人しかいなければ、客からも顔と名前を覚えられやすい。その強みを生かさない手はないのだ。
大きなものに打ち勝つ秘訣がここにあるのではないか。愛情をこめて、工夫し、絶えず新しい企画を仕掛けてゆけば、熱意は必ず伝わる。いい例だ。