、“商工春秋”2月号より「東海道名所古跡三宿続 庄野・石薬師・四日市」
本シリーズは、三つの宿場それぞれにゆかりのあるものが描かれ、四日市は、庄野、石薬師と一組になっている。本品は、残念ながら最上部が切り取られている。
四日市にゆかりのあるものとして描かれている赤堀村水右衛門は、亀山で実際に起こり、歌舞伎の題材にもなった石井兄弟仇討の敵、赤堀水野助のことである。劇中では赤堀水右衛門となっており、本品の役者は五代目市川海老蔵とされる。
物語に四日市は登場しないが、地名の赤堀の名前が共通するというだけで描かれたようだ。四日市周辺赤堀村が存在することは、「東海道名所記」など各種の案内記に記されており、こうした情報をもとにしたと思われる。
雨の中、蓑の端をギュッと掴み、大きな目で睨む姿に、ただならぬ緊張感が漂う。
市立博物館学芸員 田中伸一氏