この映画は、夏休みの生きた絵物語。まるで刺繍のように人物が流れていて、郷愁を感じさせてくれます。まさに映画の詩、見事な作品ですね。
淀川長治 “究極の映画ベスト100”河出文庫より
見ていると、私たちの子供の頃とそっくりですね。川と鉄橋、子供たちが泳いでいるのに、冬冬の妹は泳げないので、かまってくれないの。腹が立ったので、お兄ちゃんたちのパンツを川に捨てちゃった。川から上がったらパンツがないので裸で帰るあたりの面白さ。私はセミが鳴くところが妙に気に入りました。ありとあらゆる少年たちの夏のスケッチが出てきます。この夏の詩。少年の詩。ひとつひとつのシーンが、鮮やかに印象に残ります。
1984年(昭和59年)の夏、小学校の卒業式シーンからこの物語は始まります(台湾では夏に卒業なのですね)。先生へのお礼、仰げば尊しの歌、日本の風景と変わりません。
卒業後、台北に住む冬冬(トントン)は、母親が入院したため、町医者をしている母方のお祖父さんの住む田舎(台中の銅羅郷)で夏休みを過ごすことになります。そこでは、列車に乗り遅れたり、事件を目撃したり、不思議な女の子との出会いがあったりします。子供目線で体験した事件の数々は、私たちが子供の頃持った記憶(不安や喜びや驚き)を思い起こさせてくれます。
村の子供たちと仲良くなった冬冬を中心に、美しい自然の中で伸び伸びとして生きる世界を台湾のホウ・シャオシェン監督が描きます。
(1990年 台湾 98分) 第7回ナント三大陸映画祭 グランプリ受賞・第30回アジア太平洋映画祭 最優秀監督賞・第38回 ロカルノ映画祭 スペシャルメンションを獲得しています。
7月21日金曜日午後6時より スワセントラルパーキング2階会議室で上映、入場無料です。
主催:四日市諏訪商店街振興組合 協力:北勢地域若者サポートステーション
※ ポスターの訂正 四日市市市市民文化事業→四日市市市民文化事業
※ <上映作品> 平成29年11月18日(金)→11月17日(金)
市川準監督と“トキワ荘の青春”