アガサ・クリスティのミステリー小説に、かかわったすべての人が殺人犯であるという作品がありました。
貫井徳郎著“乱反射”朝日新聞出版は、地方都市に住む2歳になる幼児が不慮の事故にあって死亡します。事故の原因を突き止めるため新聞記者の父親である加山聡は、事故究明のために奔走しますが、真相は多くの人々のありふれた日常の中のちょっとした不満が蓄積された結果であることを知らされるのです。
文庫本で600ページに近い大作ですが、医者、学生、主婦、職人、公務員、老人とさまざまな人々が入れ替わり立ちかわり登場して、大きな渦が中心に向かうように事故へと近づいていきます。「どうなるんやろ?」とぐんぐん読ませてくれる小説でした。
定年を向かえた三隅幸造は、身の置き場のない自分に対して妻や娘がそんなこととは係わりなく生活していることを知って愕然とします。
ようやく犬を飼うことに生きがいを見出した幸造は、体調が芳しくないにもかかわらず愛犬を連れて毎日の散歩に励みます。
その散歩中に起こした小さな過失の蓄積が、やがて幼児の死に関係してきます。原因を知った加山は「事故の責任は、貴方にもある」と追求しますが「とんでもない言いがかりだ」と反発します。
ここで発する妻の一言には、強い印象を受けました。それは、神の声にも聞こえます。今までの人生のすべてが否定されるような強烈な一言でした。
「おれに責任があったとしても、全体の数万分の一じゃないか」
50年近くにわたって従順に自分に仕えてきたはずの妻から出た言葉は、いつの間にか別人になっていたような恐怖を感じた。
「あなた、晩節を汚(けが)しましたね」
人生は自分のエゴに打ち勝って正しく営まれるべきもの。小さな過失は、とんでもないところで自分のすべてが否定されかねませんニャ。
貫井徳郎著“乱反射”朝日新聞出版は、地方都市に住む2歳になる幼児が不慮の事故にあって死亡します。事故の原因を突き止めるため新聞記者の父親である加山聡は、事故究明のために奔走しますが、真相は多くの人々のありふれた日常の中のちょっとした不満が蓄積された結果であることを知らされるのです。
文庫本で600ページに近い大作ですが、医者、学生、主婦、職人、公務員、老人とさまざまな人々が入れ替わり立ちかわり登場して、大きな渦が中心に向かうように事故へと近づいていきます。「どうなるんやろ?」とぐんぐん読ませてくれる小説でした。
定年を向かえた三隅幸造は、身の置き場のない自分に対して妻や娘がそんなこととは係わりなく生活していることを知って愕然とします。
ようやく犬を飼うことに生きがいを見出した幸造は、体調が芳しくないにもかかわらず愛犬を連れて毎日の散歩に励みます。
その散歩中に起こした小さな過失の蓄積が、やがて幼児の死に関係してきます。原因を知った加山は「事故の責任は、貴方にもある」と追求しますが「とんでもない言いがかりだ」と反発します。
ここで発する妻の一言には、強い印象を受けました。それは、神の声にも聞こえます。今までの人生のすべてが否定されるような強烈な一言でした。
「おれに責任があったとしても、全体の数万分の一じゃないか」
50年近くにわたって従順に自分に仕えてきたはずの妻から出た言葉は、いつの間にか別人になっていたような恐怖を感じた。
「あなた、晩節を汚(けが)しましたね」
人生は自分のエゴに打ち勝って正しく営まれるべきもの。小さな過失は、とんでもないところで自分のすべてが否定されかねませんニャ。