本日の中日新聞。エンタの目で朝から笑わせていただきました。題して“カンニングの攻防”
脚本家の倉本聡さんは「役者というものは物覚えが悪くては出来ない商売だ。長いセリフを覚えなくてはならないからである」と語った後。
セリフ覚えの悪い役者は、あらゆる場所にセリフを書きカンニングする。故・三木のり平さんはその達人であった。自分の体に、セットに、小道具に書き込まれたセリフを読みながら、それと感じさせずに演技をする。まさに神業。
ところがそれを熟知たうえで、足を引っ張るベテラン役者がいた。
故・森繁久弥翁。テレビ生放送の時代である。火鉢をはさんで対話のシーン。森繁さんが見ると、のり平さんの前の、火鉢の灰に細かくセリフが書き込まれている。のり平さんがセリフを言いだそうとしたその瞬間、突然森繁さんは火箸をつかんで丁寧に灰をならして「それで?」ととぼけて聞いた。のり平さんは絶句!
故・森光子さん
鍋を囲んでの会話のシーン。森さん、山と盛られた白菜の表面にのり平さんの細かく書かれたセリフを発見。森光子さん、やおら菜箸でその白菜をつかみぐつぐつ煮える鍋の中に入れてしまった。
ア、 アのり平さんが手を出したが遅かった。
「たべられますよ」と森光子さんが笑った。
“男はつらいよ 純情編”では森繁さんの名演技を皆さんと一緒に観ることができます。楽しみです。