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のり平の パーっといきましょう

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三木のり平で思い出すのが、以前読んだ図書館の本“のり平の パーッといきましょう”小田豊二著 小学館 。

「社長シリーズ」の時に「僕はせりふを覚えてない」と言われるようになってしまったのにはまいったね。ひどいヤツになると「のり平さんはせりふを全く覚えてないんですって」なんて断言してきやがる。冗談じゃないよ。それじゃ、君、作者に対する冒涜だよ。ここでははっきり言っておきますけど、それは自分への「遊び」でもあるんです。そう自分の芸としての「遊び」。

中村勘三郎さんとやった舞台で、僕が扇子にせりふを書いておいたら、勘三郎さんがそれを知ってて、その扇子を持って舞台の下手へ逃げていっちゃった。

僕を困らせてやろうという、中村屋の魂胆はミエミエだ。

仕方がないから、その扇子を追いかける。必死で逃げる中村屋。追いつ追われつだ。中村屋も僕をもっともっと困らせてやろうとするから逃げる。とうとう逃げられたんで、僕は舞台の上で観念して、もうひとつ扇子を懐から出した。そこにもせりふが書いてあった。

中村屋もこれには吹き通しだった。お客は何がおかしいのか解らないが、中村屋が走り回るし、最後にはプッと吹き出してしまうから、ゲラゲラ笑いだす。事情を知っている役者連中も爆笑だ。

なっ、これが本当の「遊び」っていうヤツだ。


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