小田豊二 著「のり平の パァーっと行きましょう」小学館は、晩年の三木のり平氏からの聞き取り記録になっている。
こんなことも話している。もっとも、1948年製作されたジョン・フォード監督、ジョン・ウェイン主演の「アパッチ砦」という映画の題名を知っている必要がある。古い話である。
映画の撮影には、とにかく“待つ時間”が長かった。
そんな時、かなり流行ったのが「言った言葉が…」って遊びだ。映画のなぞなぞみたいなもんだったな。
ひとつ、やってみるから、あててみな。
東北の寒い村だ。その時は飢饉があって、男は出稼ぎ、娘は次々と売られていく。だから、その村には年寄りしか残っちゃいない。
その村で、特に貧しいある一軒の家から老婆が出てくる。息も凍るような寒い朝だ。老婆は曲がる腰に片手をあてて、凍った大地に足をとられないように、一歩一歩、庭に出て、ただ一羽残った鶏の世話をしようってわけだ。
それで餌をあげようとしたら、なにを思ったか、その鳥がサッとそのお婆さんの肩に飛び乗った。「コラッ」とお婆さんが手を払うと、鶏はすぐに飛び降りたが、鶏のフンがお婆さんの肩に付いた。
その時、その老婆が「言った言葉が…」てんだ。
そう、そのお婆さんがなんて言ったかを、映画や舞台のタイトルで答えるんだ。
え、答え?答えはねえ、「あっ、バッチイ鶏でえ」