“海街diary”と“麦秋”は共通点があります。是枝監督は“麦秋”を意識して作られたんじゃないかなと思っています。鎌倉市が舞台でも、山手の“北鎌倉駅”と海に近い“極楽寺”とではかなり離れています。けれど、日常が繰り返されていく朝の風景は、時の流れはあっても変わることはありません。
“麦秋”で小津監督は、離れ離れになっていく大家族制度の崩壊を予見しました。原節子の結婚を機に、菅井一郎と
東山千栄子は鎌倉から奈良へと隠居をします。そして、是枝監督は、崩壊後、散り散りになった家族の“その後”を描いているような気がするのです。放蕩の父親と離婚した母に見捨てられた女姉妹四人は、強いきずなで繋がって、鎌倉の旧家を舞台に生きていきます。
群像劇であり、映画の王道を描いた“海街diary”が、日本アカデミー最優秀作品賞に輝いたことは素晴らしいことだと思っています。