黒澤明監督“生きる”は昭和27年の作品です。
市役所の市民課長である渡辺勘治は、毎日書類に印鑑を押すだけの無気力な毎日を送っていた。
一方、主婦の集団が高架下の暗渠を公園にして欲しい旨の陳情に押しかけていたが、縦割り行政のためか、たらい回しにされるだけだった。
ある日、腹に痛みを覚えた渡辺は医師の話から胃がんであることを知る。恐怖を忘れようと享楽に我を忘れようとするが、逃れることの出来ない自分に気づく。
それからは、人が変わったようになって暗渠の公園化に邁進する。陳情にやくざと渡り合うなどこのあたりの執念はものすごい。
場面は一転して、渡辺の葬儀の席となる。ガンであることは知らなかったはずだが、彼の変化は何だったのか?と同僚たちは不思議がる。しかし、回想の中から、渡辺は自分の余命を知っていて、不可能といわれていた公園化事業を成し遂げたのだった。
渡辺は、雪の降る夜、公園のブランコに乗り“ゴンドラの歌”を歌いながら亡くなった。
※ 私の何か出来る期間は、あと十年あるかどうか分からない。いのちに限りある中、思い切った仕事が出来、幸せのうちに消えた渡辺氏がうらやましい。映画って素晴らしい!