四日市商工会議所様発行の“商工春秋 8月号”より、四日市参宮道追分之図。
広重の描いた東海道五十三次シリーズの内、題名を行書で記したもの。隷書版と同様、追分の鳥居と、饅頭屋を描いている。
画面中央に配された看板が目を引く饅頭屋で、旅人が美味そうに饅頭をほおばり、傍らには柄杓を腰に差し、薦(こも)を背負った抜け参りの子供がひと休みしている。
店の外では、鳥居をくぐったばかりの馬が、馬子に引かれて歩き、背には三人の旅人が、三宝荒神と呼ばれる鞍に乗って景色を眺めながら伊勢を目指している。
後に売り出す隷書版に比べて、クローズアップした構図に加え、鳥居、饅頭屋、抜け参りに三宝荒神という参宮道追分のシンボルをまとめて描いているのも特徴的である。 (市立博物館学芸員・田中伸一氏記)