昭和三十三年三月八日、肌寒い小雨の中、駅前(農協側)から降りた人々が、近鉄駅へ向かって小走りに駆ける。番傘を差している婦人。三重交通のバスは、ボンネットバスだ。春を呼ぶ雨は、やがて上がりそうな様子だ。
雨上がりの駅前
昭和四十年七月十五日、右の近鉄百貨店が出来て五年ほどの月日が経っている。思い起こせば、駅の前がロータリーになっていて(四日市はよほどロータリーが好きだったのか、しかし今はその姿はない)青年の像と噴水があった。この十年の街の変化には目を見張るものがある。何もない空き地に近鉄駅が出来、前の中央通りが整備され、楠の木が植えられた。三重交通が移転してきて、近鉄百貨店が出来た。その前には四日市シネマとグランド劇場ができた。四日市で八軒めの映画館の誕生だ。まさに四日市を、否、三重県を代表する玄関になった。