「今夜は、店屋物(てんやもん)!」とお袋の一声がかかる。店と台所の掛け持ちは大変。そこで、しばしば店屋物の登場ということになる。食事に出かけるのではなく、取り寄せる。前が“嶋口屋”で10メートルほどの距離を“岡持ち”に入れて持ってきてくれる。
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主に“志の田うどん35円”。うどんに“揚げ”と“なると”そしてネギが入るベーシックな物。これをおかずにご飯を食べる。冷や飯を含んで熱い汁をすすりこむ。
刻み葱はナシ
風邪をひいて寝込んだときは、鍋を持って“すうどん10円”を買いに行く。親父と映画に出かける時は、奮発して“肉うどん50円”。年末食べる年越しそばは、舌触りが嫌で、かわりに“中華そば”を食べた。うどん汁のラーメンで、ハム、しなちく、焼きのり、キザミネギ、なるとが入る。
ソースカツ丼
夏になると、店頭に製氷機が置かれた。四角い箱に木のヘラが幾本も並ぶ。5円出すとおじさんがアイスキャンデーを1本引き抜いてくれる。製氷機の音がタンタンタンタンといつもなっていた。
嶋口屋は有名で、四日市宿の南入口にあり、鈴鹿方面から来た人は、店の前に馬をつなぎ、二合徳利で一息ついたという。
メニューの中に“焼き飯”があったが、わが家でも“ヤキメシ”をつくった。ベースは冷や飯。そこへハム、溶き卵、玉ねぎ(長ネギ?)と“焼き飯の素”(炒飯の素ではない)を入れ炒める。
さて、チャーハンと焼き飯の違いは?ということで、Webで調べた。
実は、チャーハン(炒飯)と焼き飯にはれっきとした違いがあるのです。チャーハンが「卵を先に入れてからご飯を入れて炒める」のに対し、焼き飯は「ご飯を先に炒めてから卵を入れる」のです。焼き飯は、関西を起源とする「粉物」文化に根ざした食べ物と言われています。「粉物」とは、お好み焼きやたこ焼きなどの小麦粉を材料にした料理を指します。これらの料理を作るために鉄板が普及し、鉄板を使って調理する手法が必然的に育っていったのです。
おふくろのつくる“焼き飯”は、忘却の彼方にある懐かしい味だ。